理想郷 (2022)

文字数 644文字

【理想郷はもう存在しない夢物語】 2023/12/7


TVドラマ(「ハヤブサ消防団」)では過疎地に移住してくる人間が胡散臭いという設定になっていたが本シネマでは逆、教養豊かなフランス人夫婦が地元の因習深いというより貧困深い地元民に虐げられるという設定になっている。

スペインの山奥の村をその「自然」を武器に立て直そうとする夫婦、そんなことより風力発電企業に土地を売って金が欲しい住民たち、実際に起きたという事件をベースにした仏・西共同製作シネマだった。

元教師の旦那は有機農業で生きがいを感じる毎日、古民家を修復して村を観光化しようと目論む、今どきありきたりではある。
一方で貧困で嫁すらもらえない住民たちは、再生エネルギー用地買収を千載一遇のチャンスとして強硬に反対する移住夫婦を 排斥する。
どちらも「自然」がキーになっているところが煩わしい。

双方ともに話し合いで納得できる諍いではなかった、悲劇が起きる。
前半ともいうべき闘争パートが陰湿な嫌がらせに対抗する夫婦の姿、あまり快適ではなかった。
後半の事件解決パートに至ってようやく真の夫婦、家庭像が浮かび上がってくるに及んで正義は「理想」に傾く。

用地賠償金が欲しくてたまらない住民は一刀両断で罪に問われるのだろうか?
シネマの中で一度だけ触れられた「再生エネルギー企業の横暴」こそが罪に問われはしないか、という疑問を残して復讐は完遂する。

「理想郷」などもはやこの地球には存在しない夢だとすれば、本シネマ邦題はいかにも秀逸だった。
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