エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス (2022)

文字数 757文字

【有無同然】 2023/3/3


いつものように事前情報を極力カットしてはいたが、アカデミー賞ノミネート多数という抗いがたいキーワードが聞こえる一方、予告編映像に見る支離滅裂加減がどうしてもマッチしないまま、公開初日にシネコンに足を運ぶ、この不可解な想いを解消すると いう思いと共に。

見事に中国パワーの術中に嵌まってしまった、実に面白かった。
SFの衣を着たハートウォーミングシネマだった。
中国パワーと言ったが、本作は生粋のハリウッドシネマでありアジア系アメリカ人差別が無くならない現実への痛烈な一撃としての中国パワーである。

シネマは全編カンフーとパラレルワールド、もしこの二つが苦手な方にはお気の毒だったが、そうでない僕には至福の一時を満喫できた。
十方微塵のユニヴァースに存在する数多のパラレルワールドを主人公エヴリン(ミシェル・ヨー)が全力移動する、すべては全宇宙の敵となってしまった娘ジョイを暗黒の世界から守るため・・・とここまでで ???なシネマとしか思えない。
最初はコインランドリー店主の主人公だが、移動先パラレルワールドでは、映画女優、鉄板焼きシェフ、ゲイのソーセージ指人間(?)・・・もっともっと???なシネマに突き進む、見ている僕は目に耳に飛び込んでくる映像音楽に唖然とするのみ。

しかし、本シネマは決して???なのではなかった。
大団円というには衝撃的なクライマックスシークエンスだったが、結論は別の世界(別の生き方)を羨むことなく今の幸せを大切に守ること。
些細なことであり、とても大事なことであり、それでいて実現するのは簡単でないことだった。
有無同然というアジアらしい教えが頭によぎった。
無限の宇宙を飛び回り暴れ回り、日常の小さな幸せに立ち戻る、アジア系アメリカ人の願いなのだろう。
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