ゴールデン・リバー (2018) 

文字数 577文字

【あるいは悪運という名の殺し屋兄弟】  2019/7/11



フランス的ウエスタンを今様にするとこうなるのかもしれない。
いわゆる西部劇の箍がない。
もちろんニューウエスタンというわけでもない。
僕はただただジャック・オーディアール監督の才能を慈しむことしかできなかった。

物語はシスター姓の殺し屋ブラザー(兄弟)という可笑しなコンビの生き様を描く。
邦題にあるカリフォルニア・ゴールドラッシュのニュアンスは
実はシネマのテーマとは関係ない。
人を殺すことに秀でたシスターズ兄弟が殺しの仕事の成り行きで、
ゴールドラッシュの一コマにかかわるというだけのことである。

兄弟とはいえ、兄は足を洗いたいのに弟は裏稼業の頂点を目指す
…ちぐはぐな成り行きはまさにフランス喜劇であった。
ゴールドラッシュに沸くカリフォルニア、
その陰として西部開拓の悲惨な現実を本シネマはあっけらかんと見せつける。

本作でシスターズ兄弟の兄貴を演じた 
ジョン・C・ライリーがまとう無骨はいかにもフレンチノワールの雰囲気だった。
一方、弟役の ホアキン・フェニックスはこれとは対照的に
ハリウッドスターのカウボーイを再現してくれる。
このコンビネーションが、つまるところ本シネマのエッセンスになっている、すべての。

観終わって、僕はいったい何を得たのだろうかと心配になった。
なんと、フレンチシネマの余韻らしいではないか。
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