コロニア (2015)

文字数 706文字

【ナチスの亡霊】 2016/9/18



1973年のチリ軍事クーデターの混乱のなか拉致された恋人を救出するため、コロニア・ディグニダ(尊厳のコロニー)と称せられるドイツ人居留地に潜入するCAのレナ。
そこはカルト宗教団の体裁をとっているが、実態は元ナチの少年愛者が独占支配する収容所だった。
ということで、
このコロニーからの脱出劇がシネマのテーマになっている。

ナチスがヨーロッパを支配した第二次大戦中から、ナチスは用意周到に資産を南米に移して世界制覇を目指していたことは、小説でもおなじみのところ。
今シネマでも、アジェンダ社会主義政権を倒すピノチェト軍事政権・秘密警察の拷問機関を受け持っているのが、この「コロニア」という設定になっている。
その代わり「コロニア」はチリ国内では絶大な影響力を約束されていたようである。

シネマのテーマとしては収容所脱走という古典的でありながら、またぞろナチスの亡霊を呼び起こしているあたりは近年の「ナチスブーム」便乗なのだろうか。
フロリアン・ガレンベルガー監督はシネマ界に入ったのは本作を撮るためと公言している。
そんな肩に力の入り過ぎたところが随所にみられる。
演技派の俳優を配しておきながら(ミカエル・ニクヴィスト、ダニエル・ブリュール)二人ともに内面に触れるような演技には至っていなかった。
目玉であろうレナを演じるエマ・ワトソンにしても、過剰なアイアンガールに陥っていた懸念がした。

人体実験、拷問など非人間的な要素が興味深いが、実話をベースにしているだけに、奔放な構成ができなかった嫌いもあった。
それはクライマックスの脱出劇においてもしかり。
事実は小説よりも奇なり…とは常ならないものだ。
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