ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド (2019)

文字数 1,155文字

【NOBODYでありEVERYBODY】 2019/9/2



半世紀前の1969年をワンスアポナタイムといってしまえるかどうか?
今年 古希の身としては、
ワンスアポナタイムだけど19歳だった…と懐かしむものか、
はたまた、ワンスアポナタイムだからこそ、
19歳でいられたと開き直るものか、少し迷ってしまった、
性根の悪いシネマだ。

シネマ全編に漂う古き良き日々のハリウッド映画産業の面影と、
そんな中スターとしての翳りを一身に感じながら無益かもしれない抵抗を試みる、
元スターとそのスタントマン。
デカプリオさんとピットさんの競演が一番話題になっているようだが、
本シネマは実力派スターの稀に見る《協演》の甘い果実を味わうことができる。
二大スターのカット数競争などの馬鹿な現象も基本的に起きることないシナリオも優れている・・・二人はいつも一緒なのだから。

1969年といえば、世界的に若者の抵抗が起きた年、
それも最後の抵抗、これからの大きな潮目の変化が感じられていた。
そんな時代を象徴するかのような主人公カップルの悪戦苦闘を
シネマでは日常の出来事としてフォローしていく。
TVのヒーローから銀幕での成功をめざす、演技派といわれる本物の俳優になる
…そんな道が見えてくる。
その反対に、スパゲティウェスタンに総称されるイタリア娯楽シネマ路線にも挑戦する、
お金は稼げる。

しかしながら、人間は年を取る、間違いなく。
いつまでもアクション俳優を維持できるのかという不安に圧死する二人、
その寸前に起きる暴力事件。
リック・ダルトンとクリフ・ブース、
彼らはハリウッドのNOBODYであり、EVERUBODYだった。

ほぼ全編ノスタルジックな半世紀前のハリウッドを切り取って
僕ら高齢者を愉しませてくれるタランティーノ。
当時のTVドラマが、実録調で再現される、
街角のポスター、車体広告に当時の人気ドラマが垣間見える。
「FBI」、「コンバット」、「ボナンザ」・・・・・
スティーブ・マックィーン、ブルース・リーなど実名のスターがそのリアルな言動をあらわにする。
僕は心が1969年にタイムスリップしてしまうのを止められなかった。
特にスティーブを演じたダミアン・ルイスさん、
「バンド・オブ・ブラザーズ」での第一印象がマックィーンそっくりさんだったことを思い出した。
彼のスティーブの物真似がまさか見れるとは思わなかった。
そんな素人の想いをしっかりと掬ってくれるタランティーノ監督だった。

お約束であるはずの「血のシークエンス」も忘れずにキープされパワーアップされていた。
何か忘れていませんか? と思った頃合いで出現する
タランティーノ様式美(?)にも十分満たされる。

望みとしては、高齢者のみならず若者にもこの愛すべきシネマ業界、
と そこに生きる人たちへの深い愛を感じてほしい。
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