母の聖戦 (2021)

文字数 672文字

【正義を担う者はいない】 2023/3/16


メキシコ犯罪組織に一人で挑んだ母親物語。
【民間人】といオリジナルタイトルがメキシコ警察組織の腐敗を皮肉っていた。
誘拐ビジネスに悪どもが群がるのも、麻薬カルテル抗争が治まらないのも、取り締まる官憲が賄賂に塗れ機能していないためであることは、小説やシネマに頼らなくてもリアルニュ-スで僕の知るところである。

ただし本シネマは麻薬戦争やマフィアを取り扱うエンターテイメントとは明確に区分されて製作されていた。 エンドロールの献辞によればモデルとなった女性がいたとのこと、彼女の怒りと絶望が本作でドキュメンタリーのように伝えられる。
メキシコでは身代金目当ての誘拐ビジネスが日常化している、警察が機能しないから数多くの被害者がいまだその生死すら定かにされないまま放置されている実態が、ある母娘のケースを通じて明らかにされるのが本シネマのテーマであり、悲しい訴えでもあった。

シネマは母娘の普段通りのある朝から始まり、誘拐通告電話、交渉、金の支払い、娘消息不明、警察に通知、軍部へコンタクト、個人調査、などを通して無力である母親が誘拐犯に迫る経過を淡々と追いかける。 そこに見るのは、警察の腐敗と無気力、軍隊の強権と逸脱、見捨てられた被害者とその家族、どこにも救いのないシネマだった。

犯人を追い詰めた母親が最後に見たものはいったい何だったの?
正義を担う者が皆無な世界、もしかしてこれが真実なのだろうか。
メキシコではなく、ベルギー・ルーマニーの製作シネマであることが、厳しい現実を一層リアルにしている。
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