ボン・ヴォヤージュ (2003)

文字数 728文字

【楽天思考】 2007/7/5



「戦争か和平か」と題する新聞を見た街の市民が、
「数時間で休戦になるさ」。
フランス降伏のニュースを聞いて、パリから疎開してた上流階級のご婦人が、
「これでパリにもどれるのね、・・・ドイツ軍?仲良くやるわよ」。
そうなんだね、もともとフランスとドイツは共生する方法を賢くも習い得ていたんだね。

ストーリーは、有名女優(イザベル・アジャーニ)を核に、
彼女の色香に振り回されるコメディエピソードが、
敗戦による共和制崩壊の恐怖と混乱のなかで、
絡み合う仕掛けになっている。
サスペンス・コメディかな?ジャンルとしては。

そんな、ヴィシー臨時政府樹立渦中の群像コメディだから当然なんだろうけど、
レジスタンスシネマにあるような深刻さは一切切り捨てられているのが愉快だ。
確かに、ナチスのスパイは登場するけど、どっちかといえば道化役。
フランス軽喜劇の趣に懐かしさと暖かさで胸いっぱいになった。

ドイツ軍に進駐されて国が亡くなりそうなときのフランス人の気持ちなんて、
そういえば想像したこともなかったけど、
みんな逞しいものだ。

コメディとはいえ、名匠ジャ・ポール・ラプノーが今になって伝えたかったのは、
このシネマに流れている楽天思考なのだろう。
女優はパリにもどり映画出演を続け、パリ市民は「こともなし」のようにシネマを鑑賞する。
この劇中シネマにかぶさる Finマークは、久しぶり正統フランスコメディ面目躍如だった。

おまけ:
唯一深刻だったのは「重水」を開発した科学者ご一行。
ナチスに重水が渡れば原爆を作られる・・・といってドタバタと英国に脱出する。
歴史事実は、ナチスではなくアメリカが原爆を作る、そして・・・・・ということなんだけど、
やはり仕方ないでは済まされない。
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