Mr.ホームズ 名探偵最後の事件 (2015)

文字数 556文字

【やり残しのない人生】 2016/3/21



93歳のシャーロック・ホームズ物語、
残念ながらというか、当然というかホームズもボケている。
人生を知識で積み重ねてきたホームズにてとって、自慢の頭脳の衰えは耐えがたい屈辱であり、恐怖だった。
頭脳を明晰にするため養蜂しロイヤルゼリーを摂取し、遠く日本にまで足を延ばして山椒を持ち帰る、すべては最後の事件を思い出すために。

こんなホ-ムズは観たくないのが正直な気持ちだった。
ホームズだからというわけではなく、一般的な加齢による頭脳崩壊を我が身に置き換えてしまうからだ。高齢になると近記憶がなくなるといわれるが、30年前の遠記憶だって同じように戻っては来ない。

ホームズが、それほどまでに30年前の記憶を蘇えらそうとした理由が、実は本シネマのミステリーのキーになっている。
そこには、名探偵の孤独、寂しさを埋める女性の影があった。
ワトソンもマイクロフトもすでに逝ってしまったいま、気がかりは最後の事件の真実、
そこにあったのは人生の大きな悔恨だった。

シネマは名探偵の曾孫の歳の少年との心の交流を軸に、彼の記憶をたどる旅のような形になっている。人生にやり残した思い、心の奥襞に仕舞い込んだ情熱があるのなら、早めに決着をつけた方がいいようだ。

高齢者には、ドッキリな身につまされる物語だった。
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