天空の蜂 (2015)

文字数 688文字

【国を守るということ】 2015/9/12



骨太なアクションシネマが、まだ日本でも製作できるんだ、ちょっとした感動でした。
社会政治上の問題提起に製作人全員が腰が引けなかったのはなお良しとするところです。
1995年時点での問題提起という形でその後の日本の劣化傾向を鋭く指摘していました。

核発電テロをテーマにした名作としては「太陽を盗んだ男」が記憶に刻み込まれていますが、
今シネマにはファンタジー風味は一切なく、真正面から核発電の是非に迫ります。
核発電に依存するもの、傷つくものという単純な構成に留まることなく、
技術者のプライド、家族、教育、
はたまた国家安全保障にまで広がる問題の根をみせてくれます。
その問題の「根」を2011・3・11に持ち込む因縁のエンディングに、
前述の「骨太評」を差し上げます。

核発電安全性神話を壊すことなく1995年の事件を隠蔽した結果、
2011年に僕らは大きなしっぺ返しを受けたのでしょうか?
存在意義のない自衛隊を放置し続け、災害救助をその任務と信じるに至った若者を、
結果として宗主国の戦いに巻き込むのでしょうか?
経済格差は依然拡大し続けています、国が守るのは人間なのですか、それとも富なのですか?

命を懸けて蜂の一刺しを目指す若者、その犯罪を同じく命を懸けて防ぐ若者がいました。
「狂っているのはどっちだ?」の問いかけは残念ながら2011年に届いてはいませんでした。
「この国は守る価値があるのか?」
・・・・国を守るということは人々を守ることに違いないでしょう。

江口さん、本木さん、
抑制された深い演技のお二人のおかげでいろいろ考えてしまいます、いいシネマです。

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