女王蜂 (1978)

文字数 597文字

【コンワールドは健在】1978/4/9


市川崑監督、金田一耕助シリーズ第4弾、第1作「犬神家の一族(1976)」は拝見したが、続く2~3作はパスしている。この2作の評判がよろしかったのでちょっと歯がゆい思いをしていた。
横溝正史シリーズとも称せられる本シリーズの仕掛人は、またしても角川春樹氏、小説とシネマのカップリング販促は相変わらずだった。

しかしながら、これまでのマーケティングと根本的に異なるのが原作の特殊性だろう。
金田一耕助探偵が謎を解明するというお定まりのパターンは1ミリも揺るぐことなく、怪奇のおどろおしさに満ちたなかで、人が抗うことのできないルーツや性をテーマにしている、かって経験したことのない探偵物語が創り出されてきた。

4作目ともなれば横溝恐怖を各種アレンジし、工夫を凝らしてはいるがどうしても事件解明パートに力を注がざるを得ず、ルーツ探求はじめせっかくの布石が回収されないまま残され、その結果シネマ全体がぼやけてしまい同時に観る僕を混乱させた。
同様に4作目となれば複数回目の無理なキャスティングが目立ち、たかがシネマとはいえ細やかな配慮が欲しかった。

つまるところ短期間でのシリーズ多発の弊害が感じられたのだが、映像自体は相変わらずの市川崑ワールド、こちらはますます快調だった。
ここまで愛情を込めた映像づくりができるコンさん、何と言われようと巨匠だった。
(記:1978年4月9日)
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