鑑定士と顔のない依頼人 (2013) 

文字数 887文字

【クレアに夢中】 2013/12/21



日本語タイトルからTVの○○サスペンス劇場を思い浮かべてしまうけど、
実際これはミステリーなのだろうか?
途中から依頼人はその美しい容姿を見せてくれるから、
タイトルの嘘はミステリーを破たんさせてしまう。

おそらくは、本シネマはラブストーリーなのだろう。
絵画に閉じ込められた永遠の美女たちを愛した老人が、
生身の女性に恋し、その毒気に感染し人生をまるまる差し出してしまうという悲恋なのだろう。
トルナト-レ監督、エンニオ・モリコーネ音楽というブランディング戦略の割には
そこにイタリアン風味はない。

インチキ競売でしこたま名画を秘蔵している、表向きは権威ある美術鑑定士を演じるのも
オーストラリアの異才、ジェフリー・ラッシュ。
鑑定士の右腕、心強い修復職人はイギリス人売り出し中のジム・スタージェス。
本当は美しい顔を持っている依頼人クレアはオランダの女優、シルビア・ホークス。
間違いなく一癖ある人物を演じるドナルド・サザーランドは今やハリウッドの長老カナダ人。

イタリア人俳優はどこにもいなかった。
物語の舞台もイタリアではない。
勝手にイタリアンシネマの趣を期待していた僕の方が悪かった。

ではこのグローバルイタリアシネマをどう楽しむか?
僕は途中から顔出ししてくれた依頼人クレアを演じた
「シルビア・ホークス」に夢中になっていた。
久しぶりにシネマの中の女性に見とれていた。
広場恐怖症の謎の依頼人のベールはすぐ解かれてしまう。
隠れ部屋から出てきたクレアと心を通じ始める鑑定士。
彼女は長い間世俗から隔離され、ある意味では名画の中の美女のようだった。
鑑定士が惹かれていくと同時に僕も「顔のある依頼人」にどんどん、魅入られていく。

この後の展開は、オールドファッションなミステリー展開かもしれない。
しかし脚本は随所に、その謎解きの種を撒いている。
結局、謎解きは重要な要素ではなかったのだろう。

エピローグシーンとして、
鑑定士がクレアの痕跡を求めてプラハのカフェを訪れる未練のくだりがある。
「待ち合わせだ・・・」という鑑定士、最後までクレアの虜になっていた。
そして見ている僕も。

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