007 スカイフォール (2012)

文字数 1,077文字

【リフレッシュ「007内伝」】 2012/12/2



時代とともに「007」も変わっていく、それも良し。
中学生のときから、第1作から観継いできた本シリーズが50周年になった。
自分の変わり果て様から比べれば、ヒーロー「007」は変わらないという錯覚にもなる。
しかし現実は、第1回作品「007は殺しの番号」以来続いていた、
「西側世界の秩序」vs「世界規模の悪」という構図を維持できなくなった近年だった。

そして、
記念すべき50周年では、【007外伝】の趣が強い「MI6内輪揉め編」と相成った。
(内輪揉めだから【007内伝】のほうがいいのかもしれない。)
Mに切り捨てられたダメ諜報員の復讐劇と相まって、今作に流れるのが「世代交代」の哀愁だ。
復讐パートはハミエル・バルデスの怪演によって
「かたき役」を007が打ち倒すカタルシスも倍増された。

女性Mの設定がここで生かされることになった・・・
復讐の裏側には父と母の権威と愛を兼ね持つMへのコンプレックスが潜んでいた。
これは「殺しのライセンス」を与えられた諜報員の孤独を一身に庇護する「M」の宿命なのかもしれない。
「M」を巡る殺戮が今回のアクションの見所になっているのと同じインパクトで、
007の「M」への理解と愛情が全編を支配していた。

このあたり、「国家への義務の大切さ」をマッチョに強調した今作が
英国では予想外に好評だった原因ではないだろうかと憶測したりした。
翻って、国家意識の極めて低い日本の観客には、共感薄いものになるのではと懸念している。
「世代交代」はいつの時代にも哀愁を誘う。
007が、体力、武術、精神面で諜報員不合格となったり、Mに引退勧告が出されたり、
QにITオタク青年が任ぜられたりする。時代が変わる・・・それも良し、
007もその魅力を変えていく。
スカイフォールでの戦は、今までの最新武器をご披露しながら
敵を蹴散らす展開とはほど遠かった。
アストンマーチンに装備したマシンガンもはるか過去の遺物、
猟銃1丁以外は創意工夫の武器で戦う007。
これもまた、英国人好みの総力戦になっている、
まるでデズモンド・バクリーの小説に007が友情出演したかのようだった。

6代目007はエレガントな殺しをしないことは重々承知していたが、
それにしても今作の殺しは生き残るための本能的なものでもあった。
お国のためでなく、組織のためでもなく、
そして「殺しのライセンス」とも無縁の戦いであった。

シリーズにとってリフレッシュになる【007内伝】だった。
さて、次回作は原点復帰の展望が見えてくる。
007/ジェームス・ボンドは永遠に不滅です。
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