ノマドランド (2020)  

文字数 862文字

どこまで進化できるのか、シネマ



「ノマド」という言葉を知らなかった、
知っていたような気もするが意識していなかった。
辞書には(放浪者、流浪者)とある、なんとなくF・マクドーマンドが演じたいのも分かるような気がした。
シネマは、まるで違った内容だった。

でも、シネマが伝えたかった
重苦しい現実と、さわやかな生き様に心が洗われた、
ありきたりな表現しかできないけれど。
そして F・マクドーマンドは、またもやその芸歴の極みをより高めていた。

監督はクロエ・ジャオ、中国に生まれアメリカでその才能を発揮しているとのことだが、僕には初めての体験となった。
ドキュメンタリー・フィルムかと見紛うざらついた映像は
地平線がスクリーンの下側に、さして美しくもない空、夕焼けが繰り返される。
シネマのテーマでもあるキャンピングカーは、
その乾いた風景の中を列をなして移動し、群れるように駐車する。
映像のパワーを駆使できる作家の本領だった。

なんといっても決定的なC・ジャオ メソッドは現場に溶け込み、
姿を消してしまう技だ・・・シネマという姿を。
俳優すらもその現場にいる人々。
うかつにも僕は最後までそのことを理解しようとしなかった。
タイトルロールでAs They Are の名前がF・マクドーマンドの次に現れる。
俳優専門ではない人たちを、ここまでフィクションの世界に誘うことができるC・ジャオ監督は魔法使いだった。

そんな自然の存在感に圧倒されるわけもなかったF・マクドーマンド、 
三度目のオスカーは目の前だ。

老婆心:
原作書タイトルは 
「Nomadland: Surviving America in the Twenty-First Century」 、
翻訳書タイトルは 
「漂流する高齢労働者たち」
両書タイトルから推察できるように、本シネマは「自由な開拓者、アメリカの原点を描く」と誤解されることなく、アメリカ民主主義が産み落とした過度な資本主義によるアメリカのそしてアメリカ市民の抹殺、そこからの逃避・生き残りの物語である。
心して本シネマには接しなければいけない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み