正欲 (2023)

文字数 779文字

【勇気ある問題提起だがシネマ力は小さい】 2023/11/11


LGBTQIA+をテーマにしたシネマ、原作は未読だが映像化された結果を 見る限りにおいては、セクシュアリティの多様性極限に果敢に挑戦しているものの、理解でできるかどうかという以前に、つまらなかったのはマジョリティ側が描き切れなかったことに尽きる。

登場人物はマジョリティ代表の検事(稲垣吾郎さん)以外はほとんど多様性の重荷を担った人生に疲れ果てている者たち。
それはそのとおりかもしれないが、世の中にはセクシュアリティ多様性に苦しむ人々と同様に、生きるためにありきたりの悩みにもがく人たちが多くいる。
貧困、不平等、抑圧・・・数え上げればきりもない。

前述の検事がセクシュアリティ多様性を理解できない挙句に「あいつらは社会のバグ」だと切り捨てるなか、検事事務官(宇野祥平さん)の緩やかな理解がせめてもの慰めにしかならない司法制度が現実だろう。
一歩進めて人間活動すべての分野において多様性を認める時代を実現するには、マジョリティ側の教育が必須になる。
本作は多様性の末端にいる人々(失礼な表現だが現実)を認識するためには役立ったかもしれないが、 ひっそり隠れて毎日を生き残ることを目標にしていては、まさに地球にたどり着いたエイリアンと同じだろう。
彼らが堂々と自らの存在を主張できるような体制変革は、誰の責任で誰が実行に移すのか。
途方もない問題が残されたままだった。

その意味から、問題提起の記念すべきシネマとなるはずだったのかもしれないが、シネマでしか表現できる成果には乏しかった。
「つまらない」と前述したが、詰め込められた細やかなエピソード個々の精度と練度にゆるみを感じて終始苛立ちを抑えることが できなかった。
ラスト5分の対決で、初めて主演二人(稲垣さん新垣さん)が輝いただけだった。
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