シチリア・サマー (2023)

文字数 630文字

【美しくも切なくもないシチリアの夏】 2024/1/16


オリジナルタイトルは「Stranizza d'Amuri」愛の不思議という意味のようだ。

時は サッカーワールドカップ開催中の1982年夏、場所はシチリア島田舎町、主人公は花火屋の跡取り16歳の少年と、矯正施設から逃れてきたゲイの少年。
邦題の「シチリア・サマー」は、大変美しく爽やかでいてどこか哀しげな雰囲気を感じさせてくれるのではあるが、このタイトルコピーだと本シネマの本質を不当に貶めることにすらなる・・・例えばゲイの少年のひと夏の思い出・・・という具合に。

そんな色恋物語ではない。
昨年日本で製作公開された「福田村事件」を思い出した。
僅か40年余り前、人間の尊厳を蹂躙した閉塞社会と住民がいたシチリアを告発するシネマだった。 それは同時に日本を含め世界のジェンダー問題への告発にもなっていた。
前記の「福田村事件」が人種差別の歴史事実をあからさまにあぶり出したのと同じアプローチだった。
本シネマでのシチリアはゲイを排除する社会、大人は暴力で子供たちは村八分で。
ゲイを矯正するとは神の救いにすがることだけ、宗教の誤謬は今もって修正されていない。
唯一生き残るには「隠すこと」だとも揶揄する本シネマ。

LGBTQブームで近年このタイプのシネマが数多作られている。
少年たちを死に追いやった社会が現在どのように変わりつつあるのか。
まだまだ目標は遠く険しいことをつくづく思い知った。
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