そして僕は途方に暮れる (2022)

文字数 672文字

【僕も途方に暮れる】 2023/1/16


舞台作者がオリジナルを映像にするとこうなるという、良いも悪いも含めたサンプルになっている。
舞台という無限に広がる次元から、スクリーン平面に変換する過程の歓喜と戸惑いを受け取った・・・などと言ってみても舞台を拝見していない立場としては説得力はないけれど。
ただ、立漕ぎ自転車で疾走する東京の夜の盛り場、帰郷旅行のバス、フェリーの一部始終は通常余計な風景なのだとは思う、舞台の物理的制約を超えた清々しさとはいえ、作者の独り善がりが見えてはいなかったかな。

見どころは駄目家族一人ひとりのダメっぷりだった。
無論主人公(息子)はその中でも群を抜いている、こんなヤツと知り合いでなくてよかったと本気で思った。
姉は理屈で生きる熱度の低いこれまた嫌なヤツ、これまた絶対に付き合いたくないと思った。
母親は子供を溺愛し、そのせいで子供が離れていく、その寂しさを新興宗教で埋める、今時の失格親だ。
父親はさっさと家族を捨てたというだけで重罪なのに、心機一転などとほざくどうしようもなく不要な存在。
これだけでも、ダメ人間博覧会なのに、息子のパートナー、親友がこれに輪をかけて人間の弱さを見事に纏って生きている。

原田美枝子さん、豊川悦司さん、のダメ父母は熟練度が高い反面、手慣れ感も伝わってくるがやはり上手だ。
主演の藤ヶ谷太輔さんはラストカットの笑顔まで持っていく屈折した演技構成がはまっていたが、これは監督指導の賜物でしょう。
それにしても、
これだけのダメ人間をどのように参考すればいいのか、途方に暮れる僕だった。
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