カサノバ (2005)

文字数 836文字

【子豚ちゃんを見ずしてヴェネチアを・・・】 2007/3/5



チャオ、 ラッセ・ハルストレム監督。
と、お声をかけたくなるようなイタリア物語でした。
十八世紀のヴェネチア、カーニヴァル、マスケラ舞踏会。
あぁ そしてジャコモ・カサノバ。
イタリア大好きの僕には堪らないシネマでした。
でも、よくぞここまで変身したものですね、監督。
「シッピングニュース」以来思いがけず時間が経過したのは、
この変貌のためだったのでしょうか。
世界のハルストレムとなったからには、
今までの作風に執着しないという決意があったようで、
本シネマはスピーディーでコミカルな展開が眩しいほど息づいていました。

今回、観客は「カサノバ」という既成イメージに期待するところから離れたところで
思いがけないカタルシスに遭遇します。
なにせ、カサノバが真実の愛に目覚めるというのですから、歴史に反するどころか、
世の男性の拠り所すら危うくしかねない物騒なテーマを取り扱っています。

その歴史の歪みを、そしてカサノバ主義の齟齬修復プロットが、
実はシネマのはじめから虎視眈々と準備されているのが見事でした。
愛と悦楽を共有する理想のエンディングでした。

その仕掛けはずばり、「二代目カサノバ襲名」エピソード。
この仕掛けにつながる複数の人間模様は、
イタリア伝統仮面劇コメディア・デッラルテを彷彿させ、
笑いと涙と郷愁を誘ってくれるものです。
皆が幸せになるハッピーエンドって、やはりいいものです。

カサノバと召使ルポの関係はそういえばパンタローネとアルレッキーノを想像させてくれます。
かたや、カサノバが愛する女性フランチェスカは
「ヴェニスの商人」のポーシャがヴァージョンアップしたフェミニストでしたね。
(再度)そういえば「ヴェニスの商人」でアントーニオを演じた、
ジェレミー・アイアンズがコミカルな悪司教役で成功していました。
いやはやイタリア満載でした。

主役のヒース・レジャー、シエナ・ミラー
そしてかわいい子豚ちゃんを観ずに
ヴェネチアを見たと言うなかれ。
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