そして父になる (2013)

文字数 771文字

【ミッション・インポッシブル】 2013/10/5



是枝監督らしい子供を上手に取り込んだシネマに仕上がっていた。
いつものように大したものだと感心している。
その分、タイトルにもなっている【父たち】にとっては
大変なプレッシャーだったことだろう。
まして、二人の父親役者はてアマチュアの演技で、
愛くるしい子供たちに勝負しなければいけないハンディがあったのだから。
それでも、是枝イズムは伝わってきた。

「あなたならどうする?」と問いかけてきていた。
A:子供に時間をかけることが愛情のバロメーターだとする父親(理想形)
B:子供のために働くため、子供に費やす時間は僅小にとどまる父親(現実形)
赤ん坊取り違え問題を起点にした《父親像》が問われていた。
「エリートではあるが冷淡な父親」vs「貧乏だが子供が好きな父親」
の図式に惑わされてないように。
同様に「血の絆」vs「愛情の蓄積時間」の図式にも騙されてはいけない。

そこにあったのはA:(理想の父親)を忘れないでね
・・・という子供たちの切々たる願いだった。

是枝監督の原点は常に「子供の気持ち」にある。
本シネマにある騒動の悲劇は、だれも子供たちの気持ちを聞かないことであり、
大人の理論や感情で問題解決しようとすることだ。
子供に厳しい父親、子供を甘やかす父親
・・・どちらも大人の勝手な都合でしかないことを鋭く切り取っていた。

ホテルのような温かみのないマンションの家庭、一方では極端な大家族的放埓な家庭。
子供たちは親を選択して生まれ来ることはできない。
追い打ちのように親を取り換えることの理不尽さにも
子供たちはじっと耐えるだけなのか。

一人の父はまるでゲームのようにこの顛末を「ミッション」だと子供に説得する。
子供は実はすべてを知っているのにも関わらずに。
子供にとって、それはミッションインポッシブル以外の何物でもないのに。



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み