闇の子供たち (2008)

文字数 755文字

【アジアの黙示録】 2009/3/8



ズシリと重たい問題提起に顔を背けたり,
たじろぐ事がないようにしたい。
大事なのは本シネマを観たから、実情の一端がわかったからといって、
免罪符を手にしたわけではないということ。
俳優たちのボランティア出演に感動するだけでは、
地球は何も変わらず明日も回るだけだろう。

本作ではヘビーすぎるテーマ、
それも重層したやるせない悲しい色彩のテーマが、
何の衒いもなくドンと目の前に投げ出される;
幼児売春の悲惨
エイズ死の恐怖
その闇を操る裏社会の強欲
子供対象の不法臓器売買
予想していた以上のリアルな映像に正直なところ腰が引けた。
予想していた以上の無力な結末に正直なところ力が抜けた。

でも、製作側の投げかけに涙したり憤るだけではなく、
何らかの回答をしなければと悟った。
この問題の国はタイ、
主人公の言葉を借りれば「(地図の上では)日本からほんの20cmはなれた場所」。
すべての問題の根源を「格差」、国の格差、タイ社会の経済力格差に起因するもの、
と斬って捨てることは可能だろう。
確かに貧困こそは不幸リスクの大きな要因である。

本気で富の配分システムを作り直さなければ、
世界は道徳面で中世に逆戻りしてしまうかもしれない。
この格差が継続していく先は、富める者が貧者に富の一部を施す社会、
階級社会の復活である。
そこには個人の自由、尊厳などどこにもない、
その引き換えの富の施しだから。

本シネマが提起した問題解決に本シネマ観客は無力だろう。
幼児異常性愛者は矯正できない・・・心ある者は自死するのみ。
エイズは密やかに蔓延の傾向。
警察機構の弱体化、腐敗は珍しくもない。
臓器移植はそもそもなにをその目的としていたのかさえ知ることもない。

僕らは今、大きな変革の時期を目前にしている。
本作はアジアの黙示録になるのなのだろうか。

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