コンボイ (1978)

文字数 684文字

【空振り ワンストライク】


ペキンパーらしい話題作である。
しかし悪い話題、本シネマを決定的に悪くしている。
そもそものスキャンダルはペキンパーが撮ったにもかかわらず、ペキンパーフィルムではなくなったと自身が言い張っていること。
拝見してもそうなんだろうなと思える、以前にも「ダンディ少佐(1965)」で同じようなことがあったらしいが、その時はそれでもペキンパーらしさを楽しめたが、本シネマはそのレベルにもいかずにズタズタだった。

物語はアメリカントラック野郎が権力に徹底抗戦する極めて単純なもの、このテーマからしてペキンパーらしくないところに、ストーリー構成が不自然、登場人物の必然性もなく名優たちが途方に暮れていた。まるで近頃の日本映画の大作と称するシネマのようだった、お金をかけてスケール感を出せば大作になると勘違いしていた。
大型画面に大型トラックが高速度撮影で迫ってきても、それはペキンパーフィルムにはならなかった。そこに人間の息吹がまるで感じられなかった。

ペキンパーとハリウッドメジャーの争い、よくあるパターンであるが、仕上がりの遅い監督に業を煮やした会社側が勝手に編集してしまった。
暴力路線から転じて日常の中に社会への反抗を描こうとしたペキンパーにも無理なところがあった。
空振りワンストライク・・・というところだろうが、三振アウトまでツーストライク残っている、「ワイルドバンチ(1969)」、「ジュニア・ボナー(1972)」のペキンパーをもう一度!と念じた。

でも、こんな作品が日本で大ヒットするとは・・・ペキンパーもさぞや恥ずかしかろう。
(記:1978年9月13日)
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