母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。 (2018)

文字数 619文字

【ブラボー 倍賞美津子さん】  2019/2/26



安田顕さん主演シネマが気になって仕方がなく、
「俳優 亀岡拓次」以来 追っかけている。
直近主演シネマにあっても、
狂気と一線ギリギリの平凡男子を味濃く演じる姿勢に感服してきている。
今シネマでも、弱虫・泣き虫・お調子者という設定に全く怯むことなく、
なんと楽しそうに演じていた。
特に今作では、狂気パートが封印されているため、
余計に平凡路線上での性格付けにご苦労されていた。

しかし、そんな安田さんを食いちぎってしまったのが母親役の倍賞美津子さん、
お母さんは偉かった、強かった。

物語は、パワフル母さんにいつも勇気づけられて生きてきた息子と
病死していく母とのがっぷり四つの勝負を描く。
おそらくは実話ベースのお話だろうが、
それだけに特別な仕掛けのない平坦な母息子愛情物語であり母喪失悲劇でもある。
僕自身の母親喪失ケースとそんなに変わらないと思ったほどだから。

ところが、
倍賞さんが演じた癌発見から死亡までの細やかな経過表現、
それと並行して息子にそそぐ愛情に、
僕は鮮やかに自分が母と過ごした最後の期間を思い出してしまった。
母の息遣い、眼の動揺、指先の震え、奮い立たせようとする気合
・・・すべてが哀しくよみがえってきた。

そう、本作はどこにでもある家族の旅立ちと、残された者たちの再生と感謝に満ちている。
だからこそ、この平凡さこそが僕の胸に響いたのだろう。

大森監督と倍賞さんに、今回は安田さんは敵わなかったな。
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