Rain レイン  (2003) 

文字数 1,161文字

【泣かないでクリーブランドいつか良いことも】 2007/10/22




オリジナルタイトルは「THREE DAYS OF RAIN」、
三日間雨続き・・・という意味合いだろうか。
シネマスタートは、クリーブランド中心街、高層ビル群を空中から俯瞰したショットにかぶさるラジオDJの声。
クリーブランドジャズフェスティバルの案内と一緒に告げられるのが、三日間の嵐、雨の予報。

そして、
ほぼ全般に流れるのは、雨に煙るジャズフェスティバルを象徴するようなけだるいピアノ、ギター、サックスの音色。そのJazzが途切れるとき、聞こえるのは雨の音だけ、
道路を流れる雨の音、車の屋根を打つ雨の音・・・雨の音。

雨の3日間に繰り広げられるのが、クリーブランドの悲しい,哀しい、切ないエピソードの欠片ばかり。クリーブランドに雨がもたらしたのはJazzとやるせない溜息だった。

●父親
今週息子を亡くしたタクシードライバー。運命を呪う父、信号無視、左車線を走る。
お客に自分の不運を聞いてもらおうとする、雨の中疾走するタクシー。
●父親(その2)
グル-プホームでの息抜きはBARで一杯、でも小銭にも困って追い出され息子に嘘をついて金をせびる。
●母
ヘロイン中毒のため赤ん坊の親権を剥奪されたシングルマザー。あろうことか、里子に出された赤ん坊のベビーシッターをする代わりに権力に身を売る。
●夫
典型的なミドルクラスの成功者、人生の行方が見えてきている、持たざる貧者に貢献しなければの強迫概念を抑えきれない。
●男
借金返済に追い込まれる、雨のせいで商品が台無しになったタイル職人。最後の手段の強制取立てに出向く。

いやはや、雨嵐が運んできたのは彼らの憂鬱ばかりだった。
でも世の中、生きていればいいこともあるかもしれない。
悲運、悲しみなんて考え方ひとつで忘れ去れないものだろうか?
たとえば、
息子の死をぐちるタクシードライバイー以上に死を哀しみ、恐れおののく乗客がいるじゃないか?
アル中の父の繰言をじっと黙って聞いてくれる優しい息子がいることだけで幸せではないのか?
赤ん坊と生活できないから、小さな命を消してしまう・・・これも母の愛情の証なのかもしれない?
ホームレスに同情する自分に反発する妻、根源は思想ではなくて男女の相性なんじゃないか?
ビジネス(お金の督促)トラブルがいつの間にかおかしな愛の形に醸成される、愛は異常かも?

三日間の雨が終わるとき、
クリーブランドジャズフェスティバルも終了、青空が見える頃、
それぞれの哀しみをかみしめながら、また人生を歩み始める、
まるで雨もJazzも哀しみもなかったように。

今日、インディアンズがレッドソックスに負けた。
いいじゃないか、
ワールドシリーズにいけなくても世界が終わってしまうわけでもない。
泣かないでクリーブランド、いつか良いこともあるさ。
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