1941(いちきゅうよんいち) (1979)

文字数 996文字

【面白いの理由?】 1980/3/13



正直なところ《1941》のようなシネマについての感想は苦手だ。
本シネマは観終わったとき「面白かった」とか「つまらなかった」と言った
極めて単純な印象を持つだけの観客にとっては「面白くなかった」部類に入るだろう。
もちろん、シネマなんてものは大衆娯楽であるのだから
「GOODかBAD」判定だけでいいと思うし、
小難しい理論的解釈は通常はお笑い種だと考えている。

そういう意味からいえば、スピルバーグらしい感覚に満ちあふれた豪華コメディであり、
好感(変なコトバだ!)が持てる。
劇中のそっくりパロディやイメージパロディの数々も分からなくもない。

だがしかしなのである。
このコメディを創った、そしてそのコメディを理解するアメリカの精神は我々と決して同じであるはずがない・・
と言う超えがたい、埋めがたいギャップを鋭く感じるのも、
このようなコメディだからなのである。

世界のスピルバーグであるから、万国共通の笑いを狙ったことであろうが、
やはりこの手のセミ・スラップスティックは、理解のレベルが微妙に異なる。
だから、僕はコメディの面白さよりコメディ作品としてのスケールの大きさ,
それと比例しているバカバカしさの度合い、
もっといえばスピルバーグのハメの外し度合いに感心してしまった。
う~ん、どうも中途半端な感想だな、この手は苦手だ。

気を取り直して、
ファーストシーン、
「ジョウズ」のそっくりショーから始められるのはスピルバーグの力量と考えられる。
シネマビジネスでもパワーオブバランスが切り札である。
スピルバーグの個人的なシネマへの思い出や思いやりが表現されるのも、
すなわち彼の権力の証だろう。
だが、それらシネマに対する思いは深く、愛情にみちている。

ハリウッド司令長官が「ダンボ」を見ながら涙し、
歌を口ずさむシーンはそのいい例だ。
このロバート・スタックはスピルバーグ自身の投影であろう。
白っぽく輝く大型スクリーンに繰り広げられるドタバタを、
一つ一つ何をぱくっているのだろうかと考えて観るより、
この超大型コメディを創ることのできたスピルバーグの才能を画面から感じるほうが、
精神的にも正常である。

製作ジョン・ミリアス、音楽ジョン・ウィリアムス、どちらも稀有な才能である。
面白かったと言うために、いろいろ考えてもその理由が出てこないシネマもある、
本作がそうだ。
はっきり言えば、「面白かった」。
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