ハウス・オブ・グッチ (2021) 

文字数 1,014文字

【ちょっと心がほっこりした】 2022/1/17



どんな素材を料理させてもそつなくなく楽しめるシネマを創り出してくれる実績からして巨匠とお呼びしてもいいのだけど、実在の犯罪スキャンダル、それも超弩級ブランド一家の暗黒部分を抉り出すシネマにも外連見なく手を染めるリドリー・スコット監督の際どいお手並みを、拝見しないわけにはいかなかった。
結論から言ってしまえば、グッチファミリーがいなくなって、グッチブランドはより一層輝くことになりました・・・めでたしめでたしだった。
当然だけど、そうでなければシネマ化されることもなかったには違いない。

イタリア・ファッションブランドは才能ある創業者と歴史遺産ともいえる繊維素材とデザインパワーによって一時代を築いた。
僕も本シネマの時代背景のころ、あるハイファッションブランドの日本でのプロモーションの仕事をしていたことがある、同族・・・というよりデザイナー兼最高責任者の独裁経営の実態を知っているので、グッチ家の問題もとても身近に実感できた。
デザイナーの親族たちはそのブランドにすがって生活している一方で、巨額のマネーが目の前を通り過ぎてデザイナーに集積され、親族以外のスタッフは黙々と理不尽な毎日を耐えていく。
無論、家族の中にも不満は蓄積される・・・マネーの行方について。

そんなデザインハウスの赤裸々な様子が本作ではいたるところに散りばめられ再現されている。
実在の最後のグッチファミリーを演じたアダム・ドライヴァーとレディ・ガガは、ダメ三代目と玉の輿女を見事にカリカチュアしてくれた。
パオロを演じたジャレッド・レトーは今作でもあっと驚く怪演技を見せてくれる、間違いなく得した気分になるだろう。
アル・パチーノは貫禄のアルド役、日本顧客のために日本語を習っている設定に素直に笑える日本人は多くはいないだろう、日本人はグッチの得意様なのだった。
一度だけ、ミラノでグッチオフィスを訪ねたことがあった、その時の対応者が僕の後ろを指さして・・・「今 マウリツィオが顔をだしたぜ、日本人が好きなんだよ」と教えてくれたことを思い出した、さもありなん。

グッチ・ファミリーの悲劇物語であるはずなのに、観終わった後の爽快感はいったいどこから来るのだろうか?
今デザインハウスはほぼ絶滅し、世界規模のコングロマリットの手中に落ちてしまっている。
古き良き(?)時代を思い出して、僕は心がちょっとだけホッコリしたのかもしれない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み