ユリゴコロ (2017)

文字数 601文字

【叙述トリックミステリー映像化の限界】 2017/9/24



今秋話題の(本当に?)「まほかるシネマ」連作第一弾は見事に不発に終わった。

サイコキラーの告白文(ユリゴコロ)を読んだがために家族間の不信に悩み、
一方では恋人の危機に立ち向かう主人公。
原作は一見深刻な様相を呈しながら、
世の中の規則などはあまり気にしないライトで陽気ですら感じられるタッチが
魅力だったが、監督(脚本、編集も)は、罪深き夫婦の生き方を重く扱うことで
悲しみのラブストーリーに変質させている。
その意味では本シネマは、もはや まほかるシネマではなかった。

脚本段階での苦労はなんといっても同一人物の描き分けだろう、
同一人物 同一俳優を採用する限りこの苦労はなくならない。
原作ではこの謎にひと味付け加えて読者を欺いていたが、
映像化となるとそこは省かれるんだろうな。

本作での解決方法は、苦しい時のなんとやら、
最近ミステリーでよく使われる手法だった(そんなに大したものではない)。

ミステリーのもう一つの見せ場である、恋人奪還パートが思いがけず淡泊に扱われている、
愛するものを守るための暴力と同時に深い愛情を感じるところなんだけど、
う~ん 予算がなかったのかな?

昔の思い出に浸るウェットなエンディング、
原作のドライなクライム感などまるでなし。
最後までまほかるの流れに乗れなかった。

ついては「彼女がその名を知らない鳥たち」の非常識さに淡い期待をするか。

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