ふしぎな岬の物語 (2014)

文字数 658文字

【温かさと厳しさ】 2014/10/13



圧巻は、吉永さんの一人演技・・・自分の孤独を告白する場面だった。
それは小さな舞台で間近に吉永さんを観るように、
彼女の息遣いまでが感じられるようだった。
シネマでこんな情感が伝わってくるのも、やはり「不思議な物語」のせいなんだろう。

噺家さん、フォーク歌手、そして撮影地元の人々、等々 
素人役者がスクリーンを賑わせている。
シネマ製作ではリスキーなところだ。
予告編や、CMで吉永さんが「ありがとね~」を連呼するほどに
「小百合カラー」が強力に印象付けられる。
これも、シネマ製作ではリスキーなところだ。

ところが、不思議なことに、今述べたリスクが連動反作用して、
温かさと厳しさの織り交ざったテイストに仕上がっている。
本シネマの登場人物みんな「孤独の恐怖」におびえている
・・いや現代を生きる庶民であれば皆そう感じている。
だから誰かに支えられていなければ生きていけないことを知っている。
そしてそれは日本を越えて世界でも理解できる、哀しみと恐怖なのだろう。
国際映画賞受賞はその意味で、分かりやすい証拠になっている。

小家族の崩壊、不安定な老後、少子化の現実、富の格差の拡大、
これら難問に向き直り正しく対応するするのは、やはり庶民である。

多数のエキストラ、素人演技をしっかりと受け止める吉永さん。
その雑多なイメージを、一気に集束させてくれた吉永さん。
そこにはかっての経済大国の民ではない、庶民の姿、本物の日本人が生きていた。

結局は「吉永フィルム」には違いないけど、上質の想いを受け止めることができた。

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