そして、バトンは渡された (2021)

文字数 783文字

【安心・安全に咲いた可憐な花】 2021/10/29



2019年本屋大賞作品が原作になっています。
当時 原作の感想文の最後に僕が呟いたのは・・・
「本屋大賞にしてはこじんまりとした佇まいの小説、とはいえ小説ならではの夢がいっぱい詰まっています。」

小説ですから、ありえないの極致を描いてこそ評価されるものです。
原作は無論、シネマも主人公(永野芽郁さん好演)が父3人、母2人、という家庭環境をセールスポイントにしているわけですが、良ーく考えれば彼女のようなパーソナル歴史はそれほど特殊でもないことに気づきます。
顧客(読者・観客)が惹かれてしまうのは主人公がそんなことに全く挫けていないばかりか、
逆にそんな人生を積極的に受け入れ周りの人々に安心・安全を覚えさせる愛すべき存在だからです。
繰り返しになりますが、原作はそんな特異な状況を設定した割には物語は安定した流れで破綻が起きません。
これこそはシネマの見せどころ満載の原作(原案)、きっとシネマならではの脚色が施されるかなと、期待していた僕でした、本当のところ。
浅はかな思い付きだったと今は反省しています、本シネマは「本屋大賞」であるがゆえに顧客を集めることができることを忘れていました。
ということで、シネマも粛々とハッピーエンディングに向けて物語を紡ぎ続けます。

そこに僕が見るのは、「親」の存在意義。
沢山の親から愛される主人公は、実は一番の幸せ者、決して不幸な運命に惑わされたわけではなかったという否定することの難しいカタルシス。
そんなシネマではありますがシネマならではのピアノ演奏、おいしそうな家庭料理の映像がせめてもの慰めになります。

永野芽郁さんを拝見しているだけで幸せになれるのは、本シネマにぴったりの俳優さんであり、実力を備えていた、ということなのでしょう。
安心・安全がミッションのシネマに咲き輝いた可憐な花でした。
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