ビール・ストリートの恋人たち (2018) 

文字数 704文字

【一貫した主張、バリー・ジェンキンズ】 2019/3/4



おそらくは シネマファンの皆様同様 
「ムーンライト」後のジェンキンズ・フィルムに大いに期待して拝見した。

物語は1970年代初め…というからおよそ半世紀前のNYに咲いた小さな愛の物語、
ただし 虐げられた黒人カップルの。

「ムーンライト」では一貫して人種差別の積み重なった澱が、
富の格差の原因であると主張したジェンキンズ監督だった。
本作ではその歴史的差別の時代に立ち戻って、理不尽な冤罪の成り立ち、
それに伴う黒人家族の悲哀を描く。

商業シネマのなかで、これほどまでに自らの主張を貫く姿勢に、まずは頭が下がる。
そんなシネマをがっちり受け止めるハリウッドも大したものだ。
女主人公の母親を演じたレジーナ・キングへのアカデミー助演女優賞はその象徴だろう。

今作では 意地の悪い人種差別主義者の白人警官、
理想肌の人権弁護士(白人)といったような、
物語としては類型的なキャスティングが見られ、先鋭さに欠けるところではあった。

しかし、全編に流れる効果音響が
街・オフィス・部屋・ストリート・レストランを表現するものであると同時に、
どこか神経を逆なでするような不快な雑音にも感じられた。
黒人の社会構造への苛立ちと怒り、一歩間違えると暴走、
そして諦めを現していたのだろうか。

編集の流れがとても緩やかなので、歯切れよさからは程遠い。
そのあたりは好き嫌いが出てきそうだが、
ジェンキンズ監督の一貫した強い想いを感じるにはちょうど良いリズだろう。

本シネマにおいても、解決できないもどかしさと、
それに耐えて生きていく黒人が美しく描かれている。
これからもジェンキンズ・フィルムを期待している。
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