容疑者Xの献身 (2008)

文字数 1,303文字

【前略  没頭できませんでした スイマセン】 2009/9/23




還暦仲間の友へ

前略
その後お元気でお過ごしでしたか?
貴方から感想を聞かれながらずいぶん時間が経過してしまった「容疑者Xの献身」をようやく拝見しました。
貴方の評価は高かったのですが、
僕はDVD、TV画面でもよかったなと思いました、スイマセン。

厳しく偉そうに申せば、このシネマはTVドラマ優性確信犯の手によるものです。
例によって、近年僕はTVドラマは見ませんので半分憶測で説明しましょう。
1.テーマ
謎解きと異常愛がテーマですが、いずれも解釈が浅いように感じました。
謎解きは原作のせいもあるのででしょうが、シネマ本編にするには「ちゃち」でした。
異常愛も興味深いのですが、数学者の直截すぎる言動が気持ち悪くて仕方ありませんでした。
優れたシネマには影像の底に隠れ流れる観念が観るもの想いを揺り動かすものなのですが・・・。

2.俳優
堤さんはいわゆる特別出演、
対極に福山さん演じる主役の物理学者探偵がいて初めて「かたき役」個性発揮となります。
予想以上の好演技だった福山さんでしたが、やはり直球勝負のみです。
相手が変化球演技に徹底しているところでは、この「まっすぐ」が白々しくなります、
福山さんには素質があるだけに、この不整合はスタッフ側の指導不足なんでしょうね。
一方、堤真一さんの役作りを是とするには、あまりに短絡的演技かと感じてしまい納得できないままでした。
これはTVドラマの最たる欠点です。
CMタイム空白をいかに繋ぎながら、それでいて万人向けのわかりやすい影像で
いかに視聴者を和ませるかに執着する習い技が治らないのでしょう。

3.似非マーケティングシネマ
この数年、邦画界は利益の出る作品とは何か?をマーケティングし、そのためには形振りを構わなくなっています。そのひとつは人気タレント起用、ふたつは人気TVドラマのシネマ化(劇場版とかザ・ムーヴィとか称する)だと思います。
当然両者が重複すると思わぬインパクトを発することもあるのですが、
僕の本音としては、人気タレントの映画出演が多いことに辟易しています。
そしていずれの場合もその製作元締めはTV局。
自局での放映、再放映、BS局コンテンツ、ビデオ販売などなどなど、
利益捻出の手練に長けているTV局はスポンサーとも近く資金調達の最短距離に位置します。
全国TVネットで放映したドラマを同じキャストでシネマ化し、全国劇場で公開する工程には、
付加されるべき「こだわり」や「不思議」や「歓び」などが入り込むことは困難なのでしょうか?
これはハリウッド作品を揶揄する際に使用する「マーケティングシネマ」とは似ても似つかないアプローチです。残念ながら、このシネマはかなりの割合でこの似非マーケティングで製作されているように思いました。

とはいっても、結局シネマは面白ければそれでいいのです。
残念ながら僕は本シネマでは面白感覚を取り逃し、流れのぎこちなさに最後まで違和感を覚えていました。

さてさて、
僕らはこれからいく分暇な時間が増えて、シネマを観る機会も増えてくることでしょう。
そのためにも、上質のシネマを期待したいものですね。

草々
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