コットンテール (2023)

文字数 732文字

【英国の荒涼が身に迫る 】2024/3/5


鑑賞シネマ選択の根拠には特にこだわりはない、製作・配給・上映の賢者 のプロの技を信頼し身を委ねることにしているが、シネマの幅は限りなく広くて深淵であるのも一方の事実である。
そのベースにあるのは、すべてのシネマを観ることはできないとすれば、観ないでいいだろうシネマを選ぶというマイナス思考になるのも仕方ない。

さて本作はと言えば、
日本に縁の深い英国人監督長編第一作だという、しかしこれだけでは通常なら鑑賞の選択肢にはならない。
番宣も乏しく事前情報も入ってこない中、錦戸亮さんが出演していると知った、「羊の木(2018)」以来の本編登場だ。
日英合作という、意外と珍しい形態にもあり、話題作でもなくミニシアター系のエキセントリック感もないが、どこか気になる作品に思えたのだった。

主演はリリー・フランキーさん、アルツハイマーになる愛妻(木村多江さん)との愛情物語と、息子(錦戸さん)との隔絶が大きなモチーフになり、ピーターラビット誕生の地であるウィンダミア湖周辺の壮大な自然を背景にしたロケーション映像が新鮮だった。
   
家族の葛藤という手垢に塗れたテーマを一癖あるリリーさんが演じるとどうしてもうさん臭くなり、錦戸さんもそのあおりを受けていつもの切れ味を発揮することなく平凡に終わってしまった。

日本撮影シーンに見えるオリエンタル情緒、英国北部撮影の荒涼感は日英両クルーの想いがにじみ出ていると同時に、カットを積み重ねるモンタージュ編集の魅力を久々に感じるほどにシネマらしいシネマになっていたのだが、
アルツハイマーの悲惨、作家の孤独、安楽死問題、そして夫婦愛の真実・・・どれもありきたりに終始してしまった。
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