マネーボール (2011)

文字数 931文字

【センスの良さ・・・に尽きる】 2011/11/27



クリエイティブのセンスのよさがにじみ出ている品格あるシネマ。
アメリカ社会、文化の大きな背骨である《ベースボール》を素材にしたシンパシー志向。
格差社会などという生易しい言葉ではもはや表現できなくなりつつある
《富の不公平配分》に一矢を報いたヒーロー志向。
そんな親近感溢れた男気のストーリーも、まだその成功の歓喜を味わうことなく、
いまだに挑戦し続けるという現実志向。

ブラッド・ピットのセンスのよさは今に始まったことではないが、
またもハリウッドのインテリジェンスを思い知らされた。
話題として同列に並べるのはいささか気がひけるが、
日本でもちょうど今「ベースボールビジネスとGM」の亀裂が世間を騒がせている。
日本の場合は文字通りお騒がせの醜聞レベルなのだが、
本シネマでは「GM(ゼネラルマネージャー)」の存在の重さがよく理解できる工夫が
随所にされている。
おそらくは、アメリカにおけるGMのステイタスも
一般には知られていなかったのだろう・・・と想像に難くない。
本シネマが制作された所以が透けて見えた。

正直なところ、僕はGMの権力に唖然としてしまった。
同様に大リーガープレイヤーたちのクールさにも驚かされた、
彼らこそアメリカサクセスストーリーの具現者だった。
実際に本シネマの物語が進行していた10年前、
大リーグに関しては僕はイチローのことしか知らなかった(今もさほど変わりはないが)。
余談ながら、イチローの偉大さを再認識させてもらったのも本シネマの功徳だった。
そして当然のことながら、周辺ネタとしてオーナーの絶対権力、
監督の職人的頑迷さも本シネマでは明らかになる
(無論フィクションの範囲ではあるが)。

とてつもない大金が動くボールビジネス。
選手たちはは本当にビッグマネーに見合う価値を持っているのか?
球団経営は僕の知っているビジネスとは異次元の経営理論に基づく世界なのか?
富豪オーナーのお遊びに一喜一憂するのが大リーグファン庶民なのか?
そして、野球人は金にその魂を売ってしまうシステムに絡められているのか?

だからこそ、主人公は真のヒーローになった。

なんともない素材なのに考えさせられることが多かった。
センスの良さ・・・に尽きる。
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