空白 (2021)

文字数 626文字

【空白が重なり悲しみに、一級のスリラー】 2021/9/29



吉田恵輔監督、突き放す様に人の心を抉り出す、今シネマでも。
娘を悲惨な交通事故死で亡くした父親(古田新太)が事故関係者を犯人のように責める追及する…「お前のせいだ」と。

万引犯として女子中学生を執拗に追いかけたスーパー店長(松坂桃李)、
道路に飛び出した中学生を跳ね飛ばした女性ドライバー、
万引の原因を学校の「いじめ」だとされる担任教師、
皆それぞれの心の空白を傲慢な父親に圧迫されて行き詰まっていく。

父の死で無理やりスーパーを継いだ店長、
良い子で生きてきたあまりにも気弱な女性ドライバー、
生徒を落ちこぼれだと決めつけてきた教師、
彼らは自分たちの裡に「空白」を抱えていた、気づかないままに長い間。
そんな人間たちが生きるのが今の時代だと、シネマは冷たく突き放す。
「空白」の連鎖は広がり新たな悲劇を生む、結局かかわった人全員が拡大してしまった「空白」に押しつぶされてしまう。

救いのない物語なのか?
特別な事件なのか?
僕自身への問いかけに僕は答えが見つからない。

これが現実に生きることなのだろう。
自分の空白に気付くことは難しい、ましてやその空白を埋めて平らのすることはもっと難しい。
何かのきっかけで、周りにいっぱい広がっている「空白」に取り込まれ、自分の「空白」と一緒に溺れてしまうことがあることがある。
そのことに、僕は気づきもしないでまた夜眠りにつく。

なんともはや、一級のスリーラー名作を体験してしまった。
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