別れる決心 (2022)

文字数 875文字

【次ではなくて、超えるシネマ】 2023/2/17


予告編のキャッチコピーが強烈なインパクトだった・・・
「パラサイト半地下の家族 の次は これだ」
アカデミー作品賞、それも初めて外国作品の「パラサイト・・」を引き合いに出すほどの自信作なのか? 宣伝コピーだとしても無視できない、本作を見逃すわけ にもいかなかった。
あらためて韓国シネマ、その底辺の奥深さと表現力に圧倒された鑑賞になった。

刑事と容疑者との倒錯的愛をテーマにしたシネマは過去にも数知れずあるが、今作の形は初めてだった、純愛というテーマは。
だからと言って、これは純愛物語でもない。

パク・チャヌク監督渾身のミステリーの結実として純愛の花がひっそりと咲いていた。
盟友チョン・ソギョン脚本との化学反応の結果、「こんなシーン・カットの見せ方もあったんだ!」と我を忘れてしまうこと数えきれず。
だからと言って、SFXなどのテクニカルスキルに感嘆するシネマでもない。

刑事を演じたパク・ヘイルさん、容疑者を演じたのは「ラスト・コーション(2007)」で僕を魅了したタン・ウェイさん、二人とも端正な美男美女でありながら、アクションからきめ細やかな表情仕草まで幅広い能力を見せてくれる。
だからと言って、名優さんが火花を散らすというスターシネマでもない。

容疑者は密入国中国人、タン・ウェイさん自身中国の方だから拙い韓国語が笑いを取るらしいシーンがある(僕には実感はないが)。 睡眠を削ってでも捜査したい真面目刑事は一方で週末婚の夫婦生活を送る従順な夫、そこに潜んでいる危機に気づかない能天気さ。
だからと言って、韓国社会を切り取り、揶揄するような構図になっているわけでもない。

本シネマに感じたのは、韓国シネマのパワー、それを支えるプロスタッフの先進的総合力だった、今更ながらではあるが。
ヘッドライトとハンドライトの照明のなか、二人の心がひとつになる雪山のシーン、
恋人を求めて海の中に入る刑事に覆いかぶさってくる大波、
印象に残るシーンの数々、「パラサイト 半地下の家族」を超えるシネマだった。
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