セントアンナの奇跡 (2008)

文字数 733文字

【良質のファンタジー】 2010/2/7



イタリアとスパイク・リーのコラボレーション。
ニューヨークでの不可解な殺人事件から説き起こしていく謎解きがストーリーになっている。

コラボレーションの骨子は
イタリア、セントアンナにおけるナチスドイツの虐殺と黒人実戦部隊。
いずれも歴史の事実である。

ファシスト党ムッソリーニが招きいれたドイツ軍がイタリア国土を蹂躙する。
今に至ってイタリアでのドイツ人の評価は芳しくない。
本作品のような住民虐殺の記憶は簡単に忘れ去れるものではない。
とはいえ、
良識あるドイツ軍将兵の存在もきちんと描かれているあたり、EU思想は浸透しているようだ。

一方、第二次世界大戦ではほとんど実戦部隊にまわされなかった
バッファロー部隊が本作品の一方のテーマである。
アフリカ系アメリカ人で構成されるこの部隊も実際の指揮権は白人に委ねられている。
無能で偏見を持った白人指揮官に統率される黒人部隊の悲劇が明らかにされる。

解放軍としてイタリア人に迎えられる黒人兵士の言葉が象徴的だ
・・・「生まれて初めて人間らしい扱いをされた」って。
そんな黒人兵たちになついていくイタリア人少年アンジェロが、このストーリーでの奇跡。

訳あっての不思議な言動、銃弾に傷つかない幸運などが兵士たちには
まさに天使(アンジェロ)のように思えた。
戦場にあって何かにすがり信じることは心を正常に保つ賢い手立てだった。
プリマベッラ像の頭、そしてアンジェロに彼らは奇跡を願った、
生きて帰れる奇跡を祈った。

その小さな希望を打ち砕いたものへの復讐と救済が本シネマのカタルシスになっている。
ラストの救済はかって少年だったアンジェロが
いまや本物の天使になったと考えると納得できる。
事実に基づいた良質のファンタジーだった。

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