ザ・ギフト (2015) 

文字数 515文字

【そして、誰もが不幸になった】 2016/11/2



日常スリラーだろうとの予断はやはり外れた。
恐怖の復讐劇、過去を忘れ去ることはできても過去は必ず戻ってくる
…という普遍の物語だった。

物語は、故郷に錦を飾るように戻ってきたエリートビジネスマンと聡明な妻、
希望に満ちたその夫婦に付きまとう影のように訪れる夫の旧友と称する男。
イントロでは、怪作だった「クリーピー」に似た展開になるかな
・・・と思わせながら、なかなか戦慄感が湧き上がってこない。
それもそのはず、不気味な旧友ではあるが、彼からは狂気も暴力の匂いも察することはない。
次第に明らかになる、偽りの過去と夫の素顔。

不気味な男を演じるジョエル・エドガートンによる脚本・監督は異常者の恐怖ではなく、
正常な生活者の暗黒の領域をしっかりさらけ出して見せる。
こんな人間は誰の周りにも必ず生息している
・・・「嫌な奴」とよく言われる奴だ。

不気味な男の復讐は、しかしこれまた不発に終わるのだろう。
夫婦間に永遠の不信感を植え付けるはずの復讐だが、
妻はその地獄の入り口でさっさと撤退する。
残された夫は、そんな心の傷など気にもしないはずだ。

誰も傷つかず、そして誰もが不幸になっていく。
過去からの復讐だった。

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