ディアスポリス DIRTY YELLOW BOYS (2016)

文字数 616文字

【「署長物語」遅れてきたヌーヴェルヴァーグ】 2016/9/3



物語の背景となるのは、東京の不法滞在外国人15万人を守る警察署長の存在。
現実に裏経済が彼らを支えているように、
フィクションとはいえ裏都庁や裏警察があっても全く不思議ではない。

その署長を演じるのが松田翔太さん
ファンキーで一見頼りないようだが「警察の役目」にこだわり続けるナイスガイを演じる。
その姿に、優作さんのハードボイルドな面影を思い出してしまった。
・・と、褒めておいたその口で、
敵役の中国人周を演じた須賀健太さんにも同じくらいの称賛を贈る。

実はシネマのボリュームから見ると署長より犯人周の出番が多かった。
中国での迫害の記憶、日本人への屈折した憎悪、信仰への疑問から凶暴化していく周が
本作の道案内人だった。
もう一人、周を追いつめるヤクザの本音が教会付属孤児院仲間の復讐だという
センチメンタルも異色だった。
裏社会の血なまぐさい追跡劇は実は「神」の手のもとで操られていたのだろうか?
とすれば、裏世界とは言え、殺人犯を逮捕しようとする署長は、
ある意味日本社会の表の部分だった。

粗い粒子の画面、マルチ画面、執拗な手持ちカメラ映像と、
一転して美しいスチルに似たシーン。
撮影監督の細やかで、大胆な試みが感じられた。
熊切監督の現代日本を切り取った鋭い感性とユーモアに感服したことが一番だった。

老婆心:
安藤サクラさんと宇野祥平さんのコントシーンが一服の清涼剤、オマケで得した気分だった。

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