食堂かたつむり (2010)

文字数 650文字

【幸せって何だっけ】 2020/5/29



他人を幸せにすることができて、人は本当に幸福になれる。
これを「綺麗事」と笑い飛ばさない方がいい。
もしかして人類は他人に尽く喜びを
その本能としてプログラミングされているのかもしれない?

そうじゃなきゃ、いくら生活のためといっても組織の中で歯車には徹しきれないだろう。
すくなくとも日本人の精神にはそれに近い自己献身と、
ひとりだけ幸せになることへの恥じらいがある・・はずだ。

主人公倫子(柴咲が可憐)が何故言葉を失ったのか、
ストーリーのなかでは見落としたようで結局わからないままだったが、
幸せすぎてそうなったとも思えない。
(恐らくは)傷心を抱いて舞い戻った実家、
しかしながら倫子の母には人を幸せにするDNAなど一片も持ち合わせてないよう見えた。

母と倫子の過去が少しずつ明らかにされ、
母娘の絆が遅まきながら紡がれていく過程が
シネマ構成の主軸になっている。
その脇軸として織り込まれていくのが、幸福を呼ぶという「料理」のパレードだ。
特に珍しいメニューではない、でも映像からもその香り、芳醇な味わいが伝わってくる。
なかでも老未亡人が倫子の料理を食べながら、
生きる情熱を取り戻すシーンは圧巻であり象徴的だった。

そう、
食事は生きるためのものなんかではなくって、
食事は生きる喜びそのものなのだ・・・僕はそうだ。

まわりを幸せにし、母にも至福を甦らせた倫子に、最後に訪れた奇跡。
種も仕掛けもないカタルシスかもしれないが僕はふっと思わず微笑んでしまった。

これだけ他人を幸せにしたんだものね。

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