ザ・ホエール (2022) 

文字数 619文字

【心身のド迫力に圧倒される】 2023/4/7


舞台劇をそのままスクリーンに映し出したようなシネマ、意図的ですらある。
アロノフスキー監督は幻想シネマ作家、と思い込んでいた僕はリアルといえばリアルすぎるテーマの進展についていこうとしながら、いつものようにやはり置いてけぼりにされてしまう。

登場人物は舞台を踏襲して少数精鋭なのだろうと勝手に忖度し、一人一人の演技熱量を肌で感じ取ろうとしたが、ブレンダン・フレーザーの化けぶりには誰も かなうわけもなく、結局アカデミー主演賞の刷り込み通りに彼の迫力に、心身ともの迫力に圧倒され続けてしまった。

物語は単純のようであるが、名戯曲と思われる所以の仕掛けが冒頭に配置され、最後にきっちり回収されるところはエンターテイメントとしても間違いなく楽しめた。
タイトル通り「白鯨」がキーワードになっており、テーマも人生のネガティブなものばかりをよくぞと思うほど収集してくれた。
ジャンクフードとセットの爆肥満、ゲイのため家族を捨てる、姿を見せないオンライン講義、カルト宗教二世の悲劇、まるで全世界の悲惨を競うかのような救いのない展開が続く。

舞台も(未知だけど)、それをベースにした本シネマもここからが見せ場になる。
愛のために捨て去った娘、今ではいっぱしのサイコ犯罪者候補に成長している娘と心を通じるラストシーン。
娘との結びつきはお金出などでなかったことを知った僕は、
大きな安堵の溜息を吐いた、アーメン。
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