16ブロック (2006)

文字数 752文字

【称賛 ブルース・ウィリス】 2007/2/11



ブルース・ウィリスは類稀なる俳優であるが、正当な評価を受けているのだろうか?
・・・僕は彼のシネマに接するたびに大きなお世話的心配をしてきた。
できればこのシネマがそんな僕の強迫概念を払拭してくれることを願わずにはいられない。

本シネマでのブルース・ウィリスの役作りは、簡単なようで難しい。
一般的には、アル中で、うだつのあがらない刑事役は、
ある意味「オイシイ」部分が多い。
そんな主人公が予想を裏切って権力に立ち向かい一矢を報いる・・・
この手の筋書きは過去数多繰り返されながらも、
そのたびに数多観客に受け入れられてきた定番でもある。

しかしこの主人公は、いかにもの典型キャラクターを背負ってはいるが、
歯向かう相手が仲間(悪徳刑事)、おまけに自分も仲間という複雑な条件のほかに、
本来期待されている、タフネスも禁じ手にされている。
足が不自由で、体力も無い、頼るは頭脳。

シネマ自体は、ブルースひとりに依存することなく観客の予測を次々と出し抜く展開を
小気味良い編集でつないでいく。
意外性の連続はラストまで持続するけど、創る側も観る方も、
息切れ寸前に追い込まれるほどの密度の濃さだった。

僕が評価したいのは、ブルースのアクション面ではなく情緒面に絞った演出、
友情と裏切りの苦さを手抜きせず表現してくれた丁寧な脚本、
そして繰り返しになるが思い切りいい編集である。
こんな整ったフィールドが用意されたこともあって、
ブルースは望むべく完璧な領域に到達した。

人生から脱落したいと切望すらしていた悪徳刑事が、
罪の償い意識に目覚め、
その結果、
仲間から決別するにいたるまでの変化をアクションを控えて見せてくれたと思う。
簡単なようで難しい。
その難しさすら透けて見えてこない骨太なアクション秀作だ。

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