デイ・アフター・トゥモロー (2004)

文字数 1,343文字

【共通テーマ《地球寒冷化》】 2007/2/5



話は幾分それるかもしれないけど、昨年33年ぶりにリメイクされた《日本沈没》の原作は
「日本沈没 第一部」だった。
当時から僕は早く第二部が読みたかった。
というのも、そのときから、どう考えても日本沈没は沈没した後が重要だろうと思えたからだ。
国土を失い日本人のアイデンティティだけで世界中に散りじりになって
生きていかねばならない日本人の物語を早く読みたかった。
実際に小松左京は青春時代を戦争のなかですごし、
敗戦による価値観の大逆転経験から国家概念に疑問を感じ、
その後SF作家の立場から国家を超えた人類、
地球レベルの壮大なSF小説を生み、SFの地位を向上させたSF界のスーパースターだ。
極論すれば「日本沈没第一部」は、
彼の日本人論を伝える為の大掛かりな予告編でしかなかった。

完成した第二部では、流浪の民になった日本人の苦しみを描くことが実はテーマではなく、
根無し草としての日本人の意義を、日本人としての矜持を展開している。
その一方で、日本沈没を引き金とした地球寒冷化、人類絶滅へのシナリオが淡々と語られる。

先進国と称する国は、途上国を含めての全人類を救う為の視点を持っているのか?
中国やアメリカが大国としてのエゴを優先しようとするが、
それを阻止できるのは国土はないが頭脳と技術そして日本人たる誇りを待った日本人だ・・
というプロットになっている。

なるほどこれで日本を沈没させた理由もわかる。
また日本を沈めるだけでなく地球までもを凍らせてしまう発想も予想外であるが理解できる。
第二部のラストは次なる地球を見つけるため宇宙開拓に赴く日本人の末裔が登場する。
地球人でありながら、脈々と受け継がれた日本人の意思がとてもうまく表現されている、
感動のエンディングである。
こんなに日本人を意識させられた事は近年ない。
またこれを全てSFだと片付けてしまう感覚も僕は持ち合わせていない。

敗戦から何を学んだろう日本人?
小さな国土をミサイルから守る事は大切だが、他の紛争には何も関心がないのか日本人?
国がなまじあるから国家としての意地を張るのか日本人?
国が存在する事のありがたさを知るのは海外に移住した日本人だけなのか日本人?
「日本沈没第二部」はあまりに多くの妄想を惹起させてくれた。

さて《デイアフタートゥモロー》に戻ろう!
地球寒冷化いわゆる氷河期移行は地球年代記では予定された流れである。
大きな変乱の前には雑多な異常現象が起こる。
だが気象学者である主人公が警告を発しても相手にされず
結局世界規模の大惨事になってしまう。
東京にでっかい雹が降り、ニューヨークがマイナス100℃の竜巻に襲われるなど
自然が引き起こす災害は戦争の被害や宇宙人からの攻撃など比較できないくらい
無慈悲である。
それは知らず知らず人類自らが引き起こした悲劇でもある。
シネマは、しかし、このあたりの環境問題に触れることなく、
単純に気象学者の警告を無視するお約束の無能な政府上層部と、
気象学者グループの献身を縦軸に、気象学者と息子の親子の深い愛情を横軸にして、
雪と寒気渦巻く壮絶なアクションを堪能させてくれる。
間違いなく寒くなるので、防寒準備をして観よう。

ところで、暖冬は、寒冷化のいちステップに過ぎない?
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