ジュリア (1977)

文字数 842文字

【目標が高すぎた】 1978/7/5



「このシネマはきっと何かが違うはず!」なんて気張りすぎた結果、
はぐらかされて物足りなかったのが正直な感想だ。
ジュリア(バネッサ・レッドグレーブ)は
リリアン・ヘルマン(ジェーン・フォンダ)の友達。
しかしタイトルとは異なり、主人公はあくまでもリリアンであり、
彼女がジュリアと、付け足すならばダシール・ハメット(ジェイソン・ロバーツ)に
影響されて経験した事件の断片が物語のメインになっている。

ジュリアとの回想シーンがいちいちリリアンの行動を裏付ける手法は丁寧ではあるが、
あまりにもくどすぎる。
リリアンを主人公にした構成上、
ジュリアの反ナチ活動や、ハメットとの生活はとどのつまりサブテーマになり、
明らかに焦点が複層化してしまった。
結局のところ何がテーマだったのか?

ジュリアとのエピソードなど全く削除して、
ハメットとの友愛だけに絞り込んだとしても素敵な仕上がりになったろう。
何しろジェイソン・ロバーツのハメットはうれしいことに
僕のイメージどおり、せめてもう少し掘り下げて欲しかった。

しかし、本シネマの観どころは
ジェーン・フォンダのリアルライフスタイルが
リリアン、ジュリアを通して表現されるところだということも承知している。
この意味からジェーン・フォンダ抜きで本シネマは成立しなかったし、
逆にその足かせによってエンターテイメントとしての限界に突き当たってしまった。

シネマ全体の印象としては散漫とも言える印象もするが、
個々のシーン、カットには眼を見張るものがあったのも忘れられない特徴である。
創作活動に苦しむリリアンに寄り添いながら、
優しく厳しく、しかし見守るだけのハメット。
かれらの住まいの佇まい、海辺の憂愁は、
ふたりの芸術性を余すところなくモンタージュしていた。

リリアンがちっちゃなソファーに丸まって眠っていて・・・そこから目覚める
・・・僕のお気に入りシーンだ。
部分的には最好感の輝きを随所に見たものの、
惜しむらくは「目標が高すぎた」めいっぱいシネマだった。
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