浅田家! (2019)

文字数 639文字

【今回はミラクル不発でした】 2020/10/5



巧妙な脚本と達者な女優さん二人の渾身の演技の最後に奇跡を
体験させていただいた「湯を沸かすほどの熱い愛 (2016)」、
二段重ねのンカタルシスに人間の営みが不滅であることを
教えてくれた「長いお別れ (2019)」、
どちらも中野監督直近の小品でありながら「死」と真正面から取り組んだ
名作だった、僕は控えめに言っても心を揺り動かされたものだ。

勢い、本作への期待は高くなるはずだが予告編時点で、
本作は過去2作とは色合いの違うシネマになるのだろうという予感がした。
それはテーマが写真の価値であり、主人公が写真家であることに起因している。

スクリーンに何度「写真」が大写しになったことだろう、
その浅田家の写真はすべてがフェイクだ、
一方他の家族写真のインパクトはおざなりで微弱だった。
ましてや、ラストの浅田家フェイク写真は「死」を軽々しくさばいてしまった、
笑いのなかに「死」を埋もれさせてしまった。

シネマプランが軽めのコミカルをベースにしたものだと気づくのには
さほど時間はかからなかった。
二宮さんに期待したシリアス演技は封印され蚊帳の外に放り出され、
菅田さん一人がシリアスパートを引き受けさせら、
そこに違和感を通り越して不気味な印象すら感じた。

観終わってみれば、いわゆる「予告編シネマ」だった、
サプライズもミラクルもそこにはなかった。
「家族」を徹底的に肯定する姿勢は好ましい、
できればシネマでそれを深く掘り下げてほしかった前の2作のように。
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