ラスト、コーション (2007)

文字数 822文字

【ラスト、コーション】 2008/2/2



主人公は日本軍侵略下傀儡政権の秘密警察長官(トニー・レオン)と抗日テログループの女潜入員(タン・ウェイ)。
この二人の絡みシーンが、やけに多く撮られていて、「嬉し恥ずかし不思議」でいっぱいだった。最近珍しい「ぼかし」の入ってSEXシーンはかえって不自然であるし、本来このシーンは必要だったのか?
いやいや、こんなクエッションで悩んでいてはいけない。

本シネマ、卑しくも抗日運動の若者たちの尊い犠牲を一方のモチーフにしているのだから。
劇中劇で歌われる抗日救国歌に代表される高揚感はは純粋な乙女をもお国の大義のもと、身体を張ったテロ活動に走らせる。
彼らのように高教育を受けたものほど観念的アドレナリンを抑制できないものだ。
そんな地に足の着かない猛進は当然悲劇のゴールしか見えるはずも無い。
このような歴史そしてフィクションはある意味典型的なもの、シネマでも散見する。
権力の頂点に食い込む手段としての色仕掛け、頂点に君臨する人物の象徴的暗殺。
手垢にまみれたテーマではあるが永遠のテーマなのかもしれない。

もうひとつのテーマである、敵するもの同士の愛
・・・といって悪ければ、愛と欲望は闇の中に留め置かれたままだった。
尋問もこなす秘密警察長官らしく、男のサディスティックな色欲が危険そう、
ところが女はというと、まるで経験不足のままチョイ悪(ほんとは超悪なんだけど)色欲に翻弄されてしまう。
そりゃあ、トニー様だから致し方ないと無いと言ってしまえばおしまいだけど。
しかし現実にもあることだが、切羽詰った男女の愛欲ほど純粋なものも無い。
同胞を抹殺していくわが身に絶望を感じているであろう男、
男を絶頂の瞬間に殺すことに躊躇する大義の女。
終章における女の叫び、男の涙・・・・これをどう受け取るか、
見る者の「色と戒めのレベル」を問われることになろう。

それにしても、あの洪水のようなSEXをどう評価すべきなのか?
過ぎたるは及ばざるが如し。
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