ゴジラ-1.0 (2023)

文字数 863文字

【一筋縄ではいかない山崎ゴジラ】 2023/11/6


山崎貴フィルムの数々が走馬灯のようにめぐるゴジラ物語りだ、非難しているわけではない、決して。
「三丁目の夕日シリーズ(2005~2012)」のノスタルジア、
「永遠のゼロ(2013)」の神風特攻隊の哀しみ、
「DESTINY 鎌倉ものがたり(2017)」の愛の尊さ、
「アルキメデスの大戦(2019)」の戦争の愚かさ、
強引な解釈かも知れないが、その各々の作品のエッセンスがカクテルされて格調高いゴジラシネマに昇華していたのはお見事としか言いようもなかった。

コンセプトはさておいても、ゴジラ誕生70周年記念と銘打たれているように、また「マイナス1.0」のヴァージョンNo.が記されているように、ゴジラの出現以前のプロローグ版となっている、だから1954年の第一作に6年さかのぼった1948年が舞台となっている。
そして「シンゴジラ(2016)」以来ハリウッドへの海外出稼ぎ出張から戻ってきたゴジラが、敗戦で疲弊した日本人を覚醒させたように、現在閉塞状態の日本に一撃をあたえた。
過去に繰り返し説明されたゴジラの誕生秘話も、だからさらりとスチル映像でスルーに近い状況だった、しかし違和感も今更ない。

本作の面白さは前述の山崎イズムとゴジラという不可解な脅威とのミス・ミックスに尽きる。
焼け野原の東京を復興させた日本人、無駄死にを選ばなかった賢明な日本人、そんな自らを批判する古風すぎる頑迷な日本人、
国家に裏切られても自分たちの矜持を押し通す日本人、つまるところ「日本人庶民」への大きなエールが根本に横たわる作品だった。

言葉を替えれば、ゴジラは添え物でしかなかった、巨大で凶暴な添え物だったが。
ゴジラ駆除作戦には敗戦日本国も、進駐軍(米軍)も援助協力しないという極限疎外状態、自分たちの安全は自分たちで守り勝ち取るしかないクライマックスは、今の日本に生きるすべての人にその当たり前を突き付ける。

一筋縄ではいかない山崎ゴジラ、これからのプラスヴァージョンが楽しみになった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み