天使にショパンの歌声を (2015)

文字数 701文字

【ミスリード甚だしい】 2017/1/17



「ボーイソプラノ、ただひとつの歌声(2014)」、「エール(2014)」、「歌声にのった少年(2015)」、これらは天才的才能の少年・少女が苦難を乗り越えて音楽の道で成功する物語だった。

本シネマ邦題(天使にショパンの歌声を)、キリスト教女子音楽寄宿舎学校が舞台となれば前述の少年少女音楽根性サクセスストーリーだと思う。
子供たち、音楽、寄宿舎・・なかなか魅力的なプロモーション要素ではないか?
そう思わせたかったのだろう意図的ミスリードだ。

しかしながら、本シネマの小さな音楽家はピアノを弾く。
ショパンの歌声ではない。
天使は登場しない、たとえ比喩としても。

本シネマはオリジナルタイトルである「マザー オーギュスティーヌの情熱」がズバリ表している通り、一人の女性の改革活動を描いた秀作だった。
詳細は語られてはいないが、カトリック系女子学校に音楽専門校を創設した勇敢な教師が1960年代のバチカン近代化に翻弄される。
社会の変化に合わせて宗教も変わらなければいけないというバチカンの本音は、いま世界に蔓延している効率化、均一化だった。
その流れの中で女子寄宿舎音楽学校の存続を賭けて、地域社会を巻き込んで独立を図るオーギュスティーヌ。
抵抗する修道女たちを説得し、マスコミをも味方につけ、国の教育政策にコミットさえする。

孤独な戦いの中、ピアノコンクールに生徒を送り込み音楽の重要さを訴える姿は、どこか「聖人」が宿ったかのようだった。この戦いで散ったオーギュスティーヌの教えは、いましっかりと生徒たちに受け継がれていったことだろう。

大きな権力に屈することのない女性の理想の世界、現代に至ってもまだ道半ば。
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