日輪の遺産 (2010)

文字数 1,033文字

【第三の敗戦に立ち向かう】 2011/8/27



「第三の敗戦」と称される 3.11東日本大震災直後に本シネマを見ることができた意義は
予想以上に大きかった。
どうしても《マッカーサーの秘宝探し》をストーリーのテーマに勘違いしそうな原作から
大きく脱却した脚本は勇気ある決断だった。
それでもなお浅田ワールドからの力強いメッセージが素直に伝わってきた。
曰く、「勇気を持って覚悟を決めるのが日本人」だと。

現在と66年前の終戦のスキャンダルが交錯し、
そこにマッカーサー将軍の日系二世通訳の回想が組み込まれる複雑さを134分にまとめる。
破綻が生じないわけにはいかなかっただろう。

終戦時の焦土と化した国土、全員玉砕ヒステリーの充満と裏腹に漂う
厭戦にいたる疲労感を映像に再現できるのか?
ましてきわめて重要な役割を担っているマッカーサー将軍その人、
その有名な側近たちを蘇させられるのか?
優秀な軍制官である将軍がもたらした第二の敗戦といわれる改革の数々,
圧倒的権力を待った連合国進駐軍の実態を痛感させ得るのか?

ハリウッド製作でもない邦画としての限界は当初から予見できた。
ここは映像化の貧弱さを観てみぬ振りをした。
とは思ってみてもそれでも、
進駐軍の絶対権力が実感できなかったことの弊害は、
シネマが日本人論を説きすすめるほどに違和感が湧きたった。

66年後SONY、TOYOTAなどの日本製品ががアメリカを席巻してくることを
マッカーサーはすでに危惧していた。
剰え、マッカーサーが日本人の勤勉さ、純真さに恐れをなし私物である財宝を放棄してしまう。
あの進駐軍のボス、絶対権力者が日本人を畏敬したところに浅田ワールドが立脚するはずだった。
ジョン・サベージ(マッカーサー役)の孤軍奮闘では到底カバーできるはずもない、
皮肉なことにアメリカ的物量不足が露呈した、残念。

そのぶん、金原一家にフォーカスした筋書きは、
肝心の日本人論がシンプルに落ち着いていた。
やむを得ずの簡素化ではあったがシネマの限界を知り尽くした上での最適化だった。

日本人の幸せを祈りながら「鬼」となった女子学生たち。
命令を一生守り通す愚直さに隠された女子学生たちへの哀悼。
生存してしまった罪の意識をこれまた生涯持ち続ける優しさ。

日本人が第二の敗戦を克服した「勇気と覚悟」は庶民一般が共有する生き様だった。
日本人の心は財宝などという金ぴかで代替できたり、ごまかせるものではなかった。

今こそ、僕は覚悟する・・・勇気を持って第三の敗戦に立ち向かうと。

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