キセキ -あの日のソビト- (2017)

文字数 911文字

【またシネマに啓蒙される】 2017/2/4



予備知識なしで見させてもらった。
松坂さん、菅田さんの競演が見てみたいというくらいの興味だった。

全編に漂っていたのはドキュメンタリータッチでありながらの「ぎこちなさ」だった。
物語は、歯科医師になることを大前提とした音楽活動をする若者4人と彼らをプロデュースする元メタルバンドマンの青春ストーリーだった。
プロデューサーはメンバー一人の兄、その家庭は医師の父親が異常に厳格で音楽に理解がない。
父親と二人の息子の巣立ちの葛藤を描いたシネマだと理解したものの、あの「ぎこちなさ」が最後まで付きまとう。
なんとなくではあるが、真実の核心に迫りたくないような描き方だった。
シネマに必須のカタルシスに、いまひとつ充電不足のまま突入してしまったもどかしさもあった。

エンディングタイトルで気が付いた、無知な自分に気づいた。
このグループは実在しているらしいことに。
それならなおさら、この不完全燃焼の思いは何なんだろうか? 調べてみて理解した。

この10年間歯科医師と音楽活動を兼任しながら、決して姿はもちろん詳細なプロフィールは開示していないGReeeeNがいるなんて知らなかった。
HIPPOPに無知なのか、年齢的に接触する音楽ジャンルではなかったのか、全くこのグループのことは知らなかった。

シネマは、匿名性を尊重する実在の音楽グループを、注意深く再現する。
その手法は、できるだけ事実とはかけ離れたディーテイルに固執しているようだった。
そこに僕が感じた違和感、「ぎこちなさ」があった。
両親の極めて平均的な取り扱いと、一転して父親の暴力性(愛の鞭)の齟齬感。
父と息子たちの和解、あまりにもリアルな無味乾燥シーンはその象徴だった。

きっと、脚本で苦労されたことだろう。
10年間、著名アーティストが匿名性を維持していくことの苦労も偲ばれた。
僕はといえば、このGReeeeNはイケメンのリーダーとプロデューサーがいると単純に思い込んでいる。

老婆心:
神奈川歯科大学を舞台にしている、かなり大学のプレゼンスが強調されていた。
なんと、劇場CMまで流される、無論このシネマの前だけだけど。
こんなスポンサーシップは大歓迎だ。
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