HACHI 約束の犬 (2008)

文字数 732文字

【犬は厄介な生き物?】 2010/2/11



「忠犬ハチ公」は大変有名だ。
「ハチ公前で待ってるよ」とは言うが
「竜馬の前で会おうね」とはあまり約束しない。
それはハチ公が今ホットな渋谷スクランブル交差点に座っているからだけでもない。
「待ち合わせ」という視点から考察すれば、
「ハチ公前」なら 少し遅れても待っててくれそうだけど、
「竜馬前」だと なにやらせわしなさそうではある。

かように「Hachi」は人から信頼され、それゆえに長く愛されてきた。
忠犬の飾り言葉があるようにHachiは犬である。
犬とは厄介な生き物である。
僕は可愛いペットだと思うのが目一杯だけど、
人によると犬とは「家族の一員」だそうな。
この作品のHachiは教授(リチャード・ギア)にとって
家族の一員以上の存在だった・・・と思った。
二人(一人と一匹?)の間には妖しいまでの愛情が存在していた。
忠犬というきわめて日本的発想など、欧米では理解されにくいのだろうか?
愛することは、神への愛かそうでなければ恋愛なのだろうか?

ラッセ・ハルストレム監督の解釈はまさに「犬との愛情物語」として結実している。
「犬はペット」派の僕としては、
二人の戯れあい、信じあい、愛しみあいがとても重たく感じられた。

教授夫人の眼に宿る諦め、悲しみが気の毒だった。
勝手に犬を愛してさっさと先に逝ってしまう夫になんと恨みをぶつければ好いのか?
僕は途中から教授夫人のサポーターになっていた。
お約束の「帰らぬ主人を待ち続けるHachi」の情景も日本的美談ではなく,
愛に狂った遺族の異常行動だった。

「犬は家族の一員」派の方だってこの愛情過多は鬱陶しいだろうな。
死に突き進むHachiを冷ややかに見つめる教授夫人の眼差しも哀れ。
犬とは実に厄介な生き物だ。

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