ファイヤーフォックス (1982)

文字数 974文字

【賞味期限?大丈夫】 2007/1/24



シネマにも「旬のあるシネマ」があり、
「賞味期限付きシネマ」がある。
賞味期限のある作品は当然ながら、
後世から名作と呼ばれる栄誉に浴することは無い。
今回、ファイアーフォックスを観直して、
この作品こそ賞味期限シネマだったんだなとの感慨にふけった。

公開当時このストーリーは僕の常識をひっくり返すほどの衝撃だったし、
映像は震えるほどに魅力的だった。まさに旬そのもの。
(その1)ソ連に潜入するのもびっくりだが、モスクワ地下鉄でKGBエージェントを殺害する
       ・・・そんな無茶な!!!
(その2)ソ連の戦闘機ミグ31は脳波で作動する兵装をしている
     ・・・そこまで進化したか!?
(その3)クリントがロシア語を喋る・・・イメージが違うよ!
(その4)当時 流行のSFXが現実の地球上で駆使されている
     ・・・スターウォーズより進んでる!!

これら当時旬のアドバンテージは、四半世紀経過した今から見れば、
まるでクズのようなものになってしまった。
いちいち反証を挙げるまでもなくシネマの世界のみならず
政治、経済、科学、テクノロジーの進歩はすさまじいものだ。

なぜ、クリントはこのシネマでは『旬』にこだわったのだろうか?
製作された1982年は、あとから『新冷戦時代』と呼ばれる米ソ緊張の時代だった。
1979年ソ連がアフガニスタンに侵攻、
1980年アメリカがモスクワオリンピックをボイコット、
1981年イラン・イラク戦争勃発などなど。

つまり、1982年当時はソ連崩壊前の、
最後ではあるが第三世界を巻き込む世界規模の危機時代だった。
クリントの名誉の為に弁護すれば、
彼が気に入ったのは
冷戦下の軍事的バランスを維持するために、一人の退役兵士が敵戦闘機を奪取するという
痛快さなのだが、前述のような冷戦下で、この言い分は通用しなかった。

実際、アメリカ政府、軍のプロパガンダに利用されることになったのは、
自然の流れだったし、これに批評家は噛み付いたものだ。

ゴルバチョフの登場それに続く社会主義崩壊の匂いがつかめなかった、
賞味期限の短いシネマだった。

それでも、その当時このシネマにときめいた自分を忘れたくない、
今の評価は☆3個、当時だったら☆5個。
さすが、自分の感性を大事にするクリント、批評をものともせずは立派。
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