黄金のランデブー (1977)

文字数 600文字

【理念なき原作改竄】1978/5/23


本シネマ原作者が「ナバロンの要塞(1961)」のアリステア・マクリーンであることを知り、初めて彼の小説を手にしてみた。極めて質の高い海洋冒険小説に魅せられてしまい、続けて彼の小説を読み漁った。当代の売れっ子作家だそうで作品の多くはシネマ化されていることも初めて知った。確かに「ナバロンの要塞」は幼かった僕にとってもスリルと感動に包まれた記憶が鮮明にあった。

ということで、原作を熟読してのシネマ鑑賞となった。
そのマクリーン原作のテイストが本作では全く出ていない、彼の本質である「海と船」が描かれていない、致命的だった。
むろん、原作とシネマが全く同じであることに意味はない、映像で原作を飛躍させることに何ら文句はない。しかし、理念のないいい加減な変更は、原作を捨て去るのみならずシネマに新しい命を吹き込むこともできない。
原作のコアは船員と乗客のミステリアスな関係から一転してアクションに転ずる落差と意外性にあるのだが、ここを手抜きした結果 ジョン・ハリスの奮闘もむなしく脈絡のないアクションシークエンスに朽ち果てていた。
原爆の扱いについては倫理面での考慮があったのだろうが、切れ味のないマクリーン作になったうえ、妙なトリック(デビッド・ジャンセンとアン・ターケル)で幕切れにしてしまった。

誰か 本物のマクリーン世界を映像にしてくれないか。
(記:1978年5月23日)
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